日本とドイツの法文化の大きな違いとして、ドイツでは、婚姻契約(Ehevertrag)の締結が比較的一般的であることが挙げられます。これは、日本の夫婦財産契約に相当するものですが、内容的にはそれよりもやや広く、婚姻を解消した場合の社会保険の清算などについても規定されます。
したがって、ドイツ人との国際結婚に際しては、婚姻契約(夫婦財産契約)の締結がドイツ人パートナー側から求められることがあります。これは必ずしも「離婚を前提として結婚する」ということではなく、むしろ「法的な点を明確にして、安心して婚姻関係に入りたい」ということですので、そのような申し出があったこと自体を心配する必要はありません。とりわけドイツの旧貴族など富裕層の家庭の子女の場合、多額の財産を管理しているために、婚姻契約(夫婦財産契約)を結ぶことが現実問題として必須である場合もあります。
また、日本とドイツでは法定財産制が異なりますので、婚姻生活を営む上で金銭面でのお互いの誤解を避けるためにも、婚姻契約(夫婦財産契約)の締結は有益です。すなわち、日本では夫婦別産制が法定財産制であるのに対し、ドイツでは剰余共同制(Zugewinngemeinschaft)が法定財産制となっており、さらに、日本民法では別産制以外の詳細が規定されていないのに対し、ドイツ民法では剰余共同制のほかに夫婦別産制(Gütertrennung)と財産共有制(Gütergemeinschaft)の規定も置かれています。夫婦にいずれの夫婦財産制が適用されるかについて定める「法の適用に関する通則法」26条1項も、夫婦の状況により夫婦財産制が変動しうる曖昧な規定しか置いていません。
したがって、日本人とドイツ人の結婚に際しては、婚姻契約(夫婦財産契約)の締結により、夫婦財産制その他の法律関係を明確にしておくことをお薦めいたします。
但し、日本民法755条によれば、婚姻契約(夫婦財産契約)は婚姻前に締結しなければならず、また、同756条によれば、第三者に対して婚姻契約(夫婦財産契約)の効力を主張するためには、婚姻前に登記することが必要とされています。また、「法の適用に関する通則法」26条4項にも、第三者との関係において登記が必要である旨の規定があります。
中村国際事務所に併設される行政書士中村事務所は、日本法・ドイツ法の双方に関する正確な知識を前提に、日本語・ドイツ語の対訳にて婚姻契約書(夫婦財産契約書)を作成することができる、我が国において数少ない事務所の一つです。また、司法書士との提携もございますので、登記手続までワンストップ・サービスで完了することもできます。
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